マサルはすべてを飲み干すとグラスを持って立ち上がり台所へと歩いて行く。
「あれ、マサル、少し背伸びた?」、私は自然を装うためではなく、本当にそう思い言った。
「伸びてないよ。もう、そうやって期待させてさ」
「うそ、伸びたよ。ほら、夏の前の身体測定どうだったのよ?」
「えー、聞いちゃうんだー。うーん、まあ、143だけど……。でもそれ春だからもう少しはあ
ると思うけど……」、マサルはそう言うと照れ臭そうに前髪をいじる。それじゃあ今は145セ
ンチくらいってところか。それでも結構な進歩だ。
「クラスでまだ一番チビなの?」
「おい、チビとか言うなよ。まあ、まだね」、そう言うとマサルは扉の方へ歩いて行く。
「まだね」か。私は訳もなくそれに共感していた。
「ほら、早く寝ちゃいなさいよ」、私は言った。
「はいほー」、マサルはタオルを拾い上げるとそれを来たときと同じように肩に掛け、
部屋をあとにした。
 ミサキがお風呂から上がり居間に入ってきたのはそれから五分もたたないうちのこと
だった。ミサキは居間を一周確認するように眺め、マサルがもういないことを知るとさ
っきまでマサルが座っていたところに座った。
「どう、ねえ、うまくいった?」、ミサキは足をぶらぶらさせて最高の笑顔を見せた。
「ばっちりよ」、私は肘をテーブルにつけて得意げに言う。
「よーし!ついにここまで来ましたね、お姉さま」、ミサキはおどけながら言った。こ
ぼれそうな笑みとはこのことを言うのだろう。
 それから私もお風呂に入り、そのあとは私もミサキもそれぞれ自分の部屋で待機する
だけだった。階段を上がりマサルの部屋の前を通った時、扉の隙間から明りが消えるの
が見えた。早くもお休みですね。ちょうどそのとき時計の針は十時半を過ぎたところだ
った。