バナナと妹

その名に恥じないよう、我が家ではおせち料理にバナナが入っている。
バナナきんとんだ。
何年か前に妹がシャレで作ってみたところ、思いのほか美味かったので
父親と俺が絶賛したら、あいつ調子に乗って毎年毎年
山ほど作るようになった。
で、今年は雑煮にもサトイモのかわりにバナナを入るつもりらしい。
母親も止めろよ。
たしかにバナナの天麩羅は美味かった。サツマイモの天麩羅が甘くなったみたいだった。
でもな、雑煮はどうかと思うぞ。天麩羅だってタレつけたら結構マズかったぞ。
しょうゆ味にバナナは微妙なんだよ。うちはすまし汁なんだよ雑煮。
鶏肉と人参とゴボウと大根の中にバナナは明らかにイレギュラーだろ。

俺「お前さぁ、雑煮・・・」
妹「・・・楽しみ?」(満面の笑み)

もういいよ、好きにしろ。

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アメ横と妹

大晦日の話。

「大晦日気分を満喫したいからどこかに連れて行け」という、意味不明な要求を始めた妹。
両親ともに面倒くさがって相手にしたくないらしく
妹を俺に押し付けて出かけやがった。
誰が好き好んで、雪が降りそうな気温0℃の大晦日に妹と二人で出かけるか。
俺は車の運転できないんだ。オマエだってこの寒さの中、徒歩で外でたくないだろう?
そもそも「大晦日気分を満喫できるトコ」ってどこだよ。

妹「市場?」
俺「何が?」
妹「よく毎年、大晦日になると中継やってる、市場みたいなトコ」
俺「築地?」
妹「違う、ほんとの市場じゃなくて。靴とか服とか干物とかも売ってる」
俺「アメ横か」
妹「それ」

雪の中、電車に乗って上野まで繰り出す俺と妹。
ぶっちゃけ大晦日のアメ横なんて俺も初めてだ。すっげぇ人の波で歩けない。

妹「お兄、あれ」

妹が指差す先をみると、「一方通行規制中」の垂れ幕。
どうやら御徒町方向から上野方向への一方通行だったらしい。
人津波を逆流しようとしてプーケットの惨状になることを恐れた俺と妹は
ふとみかけた「地下食品館」の看板に引かれて地下街へ。

さすが地下のマーケット。冗談じゃなくアンダーグラウンドな食品しか売ってねぇ(本当)。
っていうか単にエスニック食品の店だっただけだが。
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池袋とか北新宿にも、中国やら韓国やらタイやらの輸入食品の店はあるが
ここはナマモノもあつかってる。

妹「お兄、あれ」
俺「でかいな。ナマズかな」
妹「なんて書いてある?」
俺「俺に中国語が読めると思うか」
妹「じゃああれ」
俺「カニだな。生きたまま縛ってあるな」
妹「その手前」
俺「・・・」

スッポンが生きたまま網に入ってモゾモゾうごいてる。値札には

「甲魚
 不殺 100g350圓
 殺  100g500圓」

厳密には「殺」の字は「殳」がついてない字だったが、意味は俺にも判った。
買えばこの場で捌いてくれるらしい。ただしその分、値が上がる、と。

妹「スッポン?」
俺「だな」
妹「魚屋さんなのに?」
俺「魚屋・・・だとは思うが。『甲魚』って書いてあるし、アレは魚扱いなんだろ」
妹「あっちの肉は?あれは魚じゃないっぽいよ?」

値札に「田鶏」と書かれた(厳密には左の部分がちょっと違った形)
なにやら皮を剥がれた肉が血まみれのまま積んである。
田鶏・・・鳥の一種か?

妹「お兄、足」

「田鶏」の肉の塊から足が生えている。どうも鶏の足じゃない。
っていうか、一体分と思われる一塊の肉から、四本の足が生えてないか?
ということは鳥類じゃなくて・・・

店員「オジョウサン、コレヤスイヨー」

店員が摘み上げて見せてくれた「田鶏」の血まみれ肉塊は、田んぼでゲコゲコないてるアレの形をしていた。

妹「お兄、なんでこんなトコ連れてきた・・・」

元はといえば、オマエのリクエストだろう。

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初詣と妹

前日(大晦日)の「田鶏」(過去ログ参照)で後遺症を受けたらしく
鶏肉のはいった雑煮にバナナを入れることを断念した妹。
あまり肉料理を直視する気分ではないらしい。
だが、無事に平穏な元日が過ぎると思ったのもつかの間、また無理難題を吹っかけてくるのであった。

妹「お兄、あれ行こうあれ」
俺「どれだよ、っていうかドコだよ」

パン、パン!と手を二回叩く妹。あーわかった神社に初詣に行くってのね。
はいはいわかりました。付き合えばいいんでしょ。

俺「近所のとこ?」
妹「勝負の神様」

どこで仕入れた知識なのか、勝負ごとの神様「神田明神」に初詣に行くつもりらしい。
オマエは競馬もパチンコもスポーツらしいスポーツもしないじゃないか。

妹「でも、勝負するし」
俺「誰とだよ」
妹「・・・外、寒いかな?」

オマエ今、返答に詰まって話そらしただろ。

神田明神は御茶ノ水。初詣客もけっこういるが、
昔、湯島天神に初詣に行ったときとか、花園神社の酉の市とかにくらべると、人は少ない。

妹「あんまりいないね」
俺「参拝客?」
妹「屋台」

オマエは何をしにここに来たんだ。
不機嫌そうなので屋台のチョコバナナを一本与えておとなしくさせる。
適当に賽銭を投げておざなりに拝んでいると、妹が袖をひっぱる。

妹「お兄、お獅子」

本物の獅子舞もいたが、妹が指差したのは、小さな獅子舞型ロボット
(獅子舞の衣装を着せられたロボットアーム)が自動でおみくじを引いてくれる機械だ。
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どうやらあのロボット獅子舞におみくじを引かせたいらしい。

妹「お兄、200円だって」

自分で出せよ、と思ったが議論するのも面倒なのでだまって財布ごと渡す。
獅子がウィーンと動いておみくじを加えてきた。取り出し口からおみくじを取り出す妹。
覗き込むと「凶」と出ている。

妹「『凶』だって。お兄の分」

自分の財布から小銭をだしてもう一度おみくじを引く妹。
オマエ今、最初は自分の分のつもりで引いたのに「凶」だったから俺の分にしただろ。

新しく妹が引いた方のおみくじを覗き込むと「大凶」となっていた。
罰が当たったな・・・。

泣きそうな顔をしていたので屋台でわたあめと焼き饅頭を買い与えて黙らせた。

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※日記からの転載だが本人承諾済み